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共通テスト出題傾向分析しました

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英語リーディング

 共通テスト英語では平成29年、30年の試行テストに比べ問が難化した。内容が変更となり新傾向問題が多発したが、多読をしてきた文理生はよくできていた。各設問に状況がわかるようなリード文があり、すべてが英語表記になったことも特筆しておきたい。第1問Aでは、媒体はどうであれなにかしらメッセージ性のあるやりとりが行われるだろうと予想していた。試行テストでは手紙文であった当該問題は共通テストにおいて、スマホでのSNSでのやり取りが出題された。学生が友達にUSBを忘れてきたので持ってきてほしいとメッセージを送ったが、どうやら見つからず、結局鞄の中にあった、というオチだった。友達に何を頼んだのか、そしてこの応答の後に続くメッセージについて問われた。実はこれは従来のセンター試験第1問リスニングで出題されていたような形式と類似しているため、落ち着いて読めば容易に答えられる難易度であった。同じような問題がリスニング、リーディング問わず出題される可能性があることを肝に銘じてもらいたい。

続くB問題では好きなアーティストの公式ファンクラブ入会のウェブサイト案内を読ませる問題が出題された。実際自分が申し込みをするとなると、どんな情報を取り入れたらよいのかを客観的に考える必要がある。共通テスト英語では傍線が引かれた読解問題は基本的に出題されない。どの単語や項目に注目すればよいか、検索して集約する力が必要になって来る。例えば今回の問題であれば、申し込み方法、郵送代金、ファンクラブの種類と説明はしっかりとマークして読むべきである。文理スクールの英語授業では、特にどこを理解すればよいのかというテクニックを身に付けられます。また、日ごろから現代文や英語長文では「事実と意見を区別する」ことを徹底的に行っていましたが今回fact(事実)やopinion(意見)を判断する問題が出題された。日頃から、原則という名の王道ルートを作ることから学習を始めてほしい。

そのほか、文法を理解しないと間違えてしまう問題が数問出題された。やはり早めの時期から文法を学ぶ必要があります。そして単語は英単語1900レベルまでやっておいた方が好ましいです。もちろん、発音できないと意味がありません。さらに英熟語を勉強していない人は単語以上に強化する必要があります。

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英語リスニング

 2021年度のリスニング共通テストが行われたが、昨年までのセンター試験と異なる点は大問の問題数がそれぞれ6問と4問、また各大問の分野別問題数が共通テストでは9問、センター試験では6問という点である。読み上げる回数は、後者では各問2回であったのに対し、前者では第1問、2問が2回、3問以降6問までは1回であった。読み上げの総語数は共通テストでは1,525語あり、昨年のセンター試験の1,142語より増えている。出題形式の違いは以上だが、試験時間は今年も30分であり変わっていない。問題数、読み上げ語数が増えているにも拘わらず試験時間が変わらないのは、第3問以降の読み上げ回数が減った為である。難易度は、各予備校共通して、「ほぼ同じ」としているが、筆者もこの見方に賛成である。平均点から見ても、今年度の共通テストは56.16であり、昨年の57.56と大差がない。共通テスト第4問以降、図表を基に、其々の状況、講義、会話を聞き取って答える設問が置かれているが、恐れるに足りない。こうした問題には、2,3回、形式の同じ問題を練習すれば慣れるだろう。大切なのは、基本となる「聴く力」の養成であり、これまで当予備校で行われてきた方法を継続すれば、これに十分に対応できると筆者は考えている。即ち、「読み、書き、話す力」をリスニングの授業に混ぜ込んで、4技能のスキルアップを共に意図した授業である。また、筆者が要請したいのは英語に毎日身を晒す(“exposed”)ことである。” Quantity Makes Quality.” と言うように、1日に1回は英語を聴く時間を作り出して頂きたい。この点で筆者が勧めるのは、ラジオの英語番組、1回5分から15分、「基礎英語」から「ニュースで英語術」まで、時間も難易度も様々なラジオの英語番組である。その中から面白いと思った番組を選び、テクストも買わず、ただ聴き続ける。聞き続けていくうちに、自分の興味に従い、自分なりにリスニング能力アップの方法を考える。そうすれば、リスニングを通して英語が面白いと感じるようなる。大学入試のためのリスニングであるのは確かだが、リスニングの能力は卒業後に働く領域を広げ、就くポジションの可能性を広げる。自分なりのリスニング、ひいては英語全体の勉強法にトライするチャンスとして今回からのリスニング共通テストに向かいたい。

現代文

 共通テストを実施する前段階において高校生に向け、その案を提示するために平成29、30年度に共通テスト試行問題が実施された。第1問は複数の文章や文章以外に資料として表、図、グラフ等が提示され多面的、多角的に文章を読まなければ解けない実用的文章が出題されていた。文理スクールの読みとしては学習指導要領が改訂される前に共通テスト試行テストが先走りしている感覚があった。そこで他の予備校が共通テスト国語対策のみに準拠している中、当予備校は夏休み以降もセンター試験に対応する問題や過去問を研究させ、指導していた。特にセンター試験の最後3年間は本文を読んだ後に先生一人に加え、三人の生徒が話し合っている場面の会話文タイプ(例えば2020年度センター試験問5参照)が出題されるなど、共通テストを最大限に意識したのではないかと推測できる問題が存在していた。また、段落番号が記載される評論文では、段落と文指定で文章の表現と構成についての働きや具体例、論旨を問う問題は引き続き出題されるであろうと考えていたため、対策を練っておいた。そして肝心の共通テストではやはり実用的文章ではなく、評論文が出題された。漢字の問題は様式こそ変わらないが、選択肢5つから4つに変更された。(文理スクールの共通テスト国語の授業では幾度となく繰り返し伝えた。)漢字は何から手を付ければよいか分からない人が多く盲点なのだが、何と言っても「同音異義」語からの出題が最も多い。また、周りの文脈から判断して漢字を推測する力も求められている。本文内容としては、香川雅信の『江戸の妖怪革命』より出題。やはり高校生にとって身近な話題で興味をそそるような文章が多い。本文の論理展開においても「フィクション」と「リアリティ」といったカタカナ語の対比構造がよく見受けられ、今までのセンター試験に見られる特徴を踏襲していた。(また、当予備校の現代文、英語長文授業でもほぼ毎回言っていたが)「確かに→しかし→主張」など譲歩の構文が見られた。特に英語だけではなく国語にも「構文」が存在することをぜひ認知してほしい。特筆すべき項目として挙げたいのは、傍線の引き方である。例えば「民間伝承としての妖怪」に傍線Aが引っ張られていたが、もし「民間伝承としての妖怪とは、そうした存在だったのである」までの出題であれば、「傍線Aの内容は『そうした存在』のこと、つまり『そうした』と『存在』を本文から(今回は傍線より前)探せばよい」と推測できるはずだ。このように傍線をなるべく最小限に引くことで得点率を下げる傾向がある。センター試験初期と異なり、最近では指示語や接続詞には線を立てない傾向があるのだ。実はこの方法を理解すると、今回の共通テストでは続く傍線部B、Cでも同様のことが言えるので是非確認してほしい。受験生だけでなく、新高校1、2年生も傍線のヒントを自ら探すことを常に意識してほしい。今年も他者引用の文が出題されたが、必ず本文の筆者なのか、引用者(例えば本年は哲学者フーコー等)の意見なのか区別する必要がある。
選択肢にも注意してほしいことがある。センター試験の初期にはただ本文を理解できれば選択肢が削れる問題がほとんどであった。言い換えれば傍線部は「おまけ的存在」であったが、共通テストではそうはいかない。というのは、本文に書かれている選択肢が複数存在するのだ。そのため本設問は何を問うているのか?平たく言えば、「説明なのか理由なのか」など細部にも気を付ける必要がある。本文一致問題だけでは太刀打ちのできないものが複数個現れていることは肝に銘じてほしい。
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国語の評論

共通テストの国語は第1問で表やグラフを伴った実用的文章が出題される予定であったが、(文理サイドとして、引き続きセンター試験に近いものが出るものと想定していたので、安心した)実際の共通テストでは第1問はセンター試験直近3年に近いほぼ近い評論文が出題された。問1では漢字が3問ないしは5問出題予定であったが、実際は5問出題されこちらもセンター試験とは変化なし。ただし、選択肢が5つから4つに減った。そのほか、新傾向として、他の短い文献を読み本文と関連させる問題も出題されたが難易度はそこまで高くなく標準的な難易度と言えよう。本文を単語単位でつなげ、論旨を追っていくという王道的な勉強をしていた人にとっては、実力を発揮できる問題であったと考えられる。

国語の小説

試行テストを踏まえ共通テストでは本文構成が「詩と鑑賞文」「小説と小説」など複数テキストが出題される予定であったが、実際には従来のセンター試験小説と形式は変わらなかった。(こちらについても文理の見解は小説が従来通り出ると予測)しかしながら問6において該当小説が発表された当時、新聞で掲載された批評家(宮島新三郎)の文章を踏まえて本文と照らし合わせ解く問題が出題された。それ以外には、感情の変化や理由などオーソドックスなポイントを押さえられれば、問題のない難易度であった。しかし、これはあくまでもしっかりと勉強してきた人のみに言える。また、本文前にはリード文が書かれていたがそこを読み間違えると本文に影響するので注意したい。

古文

 一見、新しい問題が出たように思えたものの、よく見ると前のセンター試験と変わらないものが多かった。ただし、文は簡単ではなく、「細かい」箇所まで理解しないと解けないものが多かった。普段から古文の通常授業では、主語を補うよう心がけさせている。どんな単語の前後では主語が同じなのか?例外はないのかをその都度考えてもらっている。そして、盲点は目的語を補うことである。他動詞にも関わらず、目的語の欠落している文章が多々あることに気づいて欲しい。これは古文の世界では当たり前であるからだ。残念ながら現代文はそうはいかない。つまりただ、品詞分解をして忠実に訳すというのは入試ではほとんど歯が立たない。また動詞、助動詞、形容詞で文法進捗が止まっている人が多くいたらぜひ覚えておいて欲しい、細かい箇所が書かれている共通テストでは、センター試験より変わらず助詞が大切でわあることを。文理受験GROUPでは、以上のように学校で行う助動詞指導に合わせて、手の届いていない「助詞」にも熱弁をふるう。たとえば、問Iでは、「え〜ず」(〜できない)、「ものを」(〜なのに)、「なば」(〜たならば)など、助詞をいかに訳せるか否かで、相当な差が付いたはずだ。敬遠されがちな、和歌からの問題も真正面から立ち向かって欲しい。今後も序詞、掛詞、枕詞、縁語、区切れなど表現技法による出題も出てくる可能性はかなり高い。上記のことは全て、文理受験GROUPでは指導していたため国語の全体の平均点は、全国平均点よりも17点高かった。よく頑張ったと思う。

漢文

 漢文は文章のほかに、センター試験の時にも出題されたタイプで漢詩も出題された。受験勉強というものをしっかりしていた人にとっては点数が採りやすかったものが多い。特に敬遠されがちな、単語帳が世の中にほとんど出回っていない漢文では国語便覧が効果的である。単語、句法、よく出る助詞などからの出題であった。また、漢詩には末尾に空所があったため押韻に関する問題であると気づいて欲しい問題。当予備校からは、評論文同様満点者や一問ミスの生徒が大変多かった。漢文の授業では、基礎からの文の読み順から初めて、句法を習うがそれだけではなく漢文は語彙力にも気を配るようにしている。今回であれば、「徒」や「固」の読みが出題されたが、日頃から送り仮名を「含めて」覚えていく必要がある。また「置き字はただ置かれているだけであって、読まないから飛ばせば良い」と勘違いされる場合が多い。今回「于」が出題されたが、これが受身的意味になることを踏まえなければ、難しかったかもしれない。日本語にした時、送り仮名を振ったため置き字になってしまっただけであるため本来は意味を伴っていることを常に念頭に置いてもらいたい。

数学

今回の共通テストでは、センター試験に比べより「思考力」が求められるようになりました。数学ⅡBの第2問を例にとってちょっと見てみましょう。 第2問〔2〕の問題、実は背景には大学で学ぶ「双曲線関数」というものがあります。sinh x,cosh x(ハイボリックサイン、ハイボリックコサインと読みます)と書くもので、この書き方からわかるように三角関数と様々な面で似通っているのです。今回の問題は、三角関数との類似性を考えさせる正誤問題でした。 なら、この背景知識を知っていないと解けないのでしょうか?いいえ、違います。 このような、「大学の知識が背景にあり、それを誘導して高校生に選ばせる問題」は今までのセンター試験ではあまりみないタイプの問題でした。しかし、実はこういった問題を一貫して出題している大学があります。東京大学です。 このような出題がされた経緯を、あくまで推測ですがちょっとだけ語ってみましょう。平成28年2月17日、東京大学の五神真総長が、共通テストに対して「高大接続システム改革についての意見 」というものを提出しています。高大接続システム改革の会議においても資料として委員に配布されているようです。そこには次のように書かれています。記述式の出題によって、断片的な知識や表面的な技能ではなく、思考力・判断力・表現力を多面的に評価することが可能であることを確認している。またこれに応 えるための受験生の努力が、論理的な思考力と文章表現力を鍛えることに役立っていることは確かである。すなわち、今まで東京大学が入試問題として出題してきた、「大学レベルの背景知識を、誘導して高校で学習する範囲の知識で解けるようにする」という問題が「論理的な思考力と文章表現力を鍛えることに役立っていることは確かである」と述べています。 このような意見を反映したのが今回の共通テストです。普段から「本質を意識した学習」を意識していれば見通しは良くなる問題が出題されているのです。普段から「本質を意識した学習」を積むことで、センター試験ではなかなか見なかったタイプの問題にも対処できるような問題だったと思います。

数学は、ⅠA、ⅡBともに、試行調査の問題を元にしている問題もあれば、異なる問題もありました。

試行調査においても出題され、今年度の大学入試共通テストでも出題された形式に「文章の正誤を判断させる」問題がありました。過去のセンター試験においても、主に数学Ⅰ「データの分析」の分野でこのようなタイプの問題は出題されてきましたが、共通テストでは、数式の特性を判断させる問題としても出題されました。高大接続システム改革における主要な柱の一つであった「記述問題の出題」に、思考の仕方の面ではセンター試験と比べて近い問題が出題されたといえます。

一方、試行調査では「パソコンでグラフを描く際の操作」に関連した問題が出題されていましたが、今回の共通テストでは出題されませんでした。「ICTを活用した学習」を推し進めていく中で、今までどのように学習してきたかが問われる問題が出題されると予想されていましたが、本年度の共通テストでは出題されませんでした。
試行調査についても言えることでしたが、センター試験と比べて考えるべきこと、計算量ともに増加しています。試験場で思考し、目新しい問題に取り組むことも必要とされるテストにはなりつつも、以前にまして「計算力」が問われる試験となりました。

■数学ⅠAについて

数学Ⅰでは、過去のセンター試験では主に計算をして結果を空欄に埋めるタイプの問題が多かったですが、今回の共通テストでは求めた式の分析をさせるような問題も出題されました。分量面では、計算量が非常に多く、また煩雑な計算を強いられる問題も見受けられました。そのため、過去のセンター試験から試験時間が10分延長されたことを勘案しても、受験生にとっては時間内に最後まで終わらせるだけで精一杯の問題ではなかったのではないか思います。

数学Ⅰの「二次関数」の分野では、今までのセンター試験ではあまり見なかった「計算した結果を選択肢から選ぶ」問題が出題されました。実際に計算をして求めることもできますが、問題文に合わせて小数を用いて計算をした場合、「近い数字」を考えると簡単に計算できる問題でした。今までのセンター試験では、あくまで「最後の位まで数字を合わせて求める」ことがメインだっただけに、目新しい出題の一つであるといえそうです。

また、数学Aの「確率」の分野では、「条件付き確率」を求めたうえで、その結果を分析した生徒の発言が問題用紙に印刷されており、そこにある空欄を埋めるという問題がありました。今までのセンター試験では、答えを出したら(自分で計算ミスのチェックのために検証するということを除けば)それで終わり、となることが多かったので、これも目新しい出題であるといえます。

■数学ⅡBについて

数学ⅡBについても、過去のセンター試験と比べマーク数は減少しているものの問題ページ数が増加しており、計算も大変だったため時間内に全て解答することは容易ではなかったのではないかと思います。ベクトルの問題など、考えなくてはならないことや計算量が非常に多い問題も見受けられました。また、数学Bの問題配置が変更となり、「確率分布と統計的な推測」が第3問に配置され、数列の問題が第4問に、ベクトルの問題が第5問に配置されました。

数学Ⅱの問題において目新しい出題として、「三角関数」の分野に、大学で学ぶ内容が背景にある問題がありました。三角関数と指数関数の類似性を考えさせる問題で、背景には大学で学ぶ「双曲線関数」というものがあります。では、高校での学習範囲を超えて「双曲線関数」を知らなくてはいけないということでしょうか?いいえ、違います。

この「双曲線関数」に関する知識を普段から身につけておかねば解けない問題なわけではありません。普段から、ただ単に学校の先生が言う通りに式変形をするのではなく、「関数を扱い、式変形をするときにこうするとうまくいきそう、だからこういう変形をしよう」と考えながら問題に取り組み、文理の授業などでちょっとした“脇道”も覗いてきた生徒にとっては取り組みやすかったのではないかと思います。

理科

 理科については、大問数が変更となり、一部目新しい問題が出題された。数年前から続いていた「より実生活に近い状況を踏まえた出題」への移行が進んでいる。

理科全科目についてみれば、「自分が学んだ知識に加え、問題文やグラフにかかれたことを勘案して考察する問題」が様々な科目で出題された。物理の第3問A「ダイヤモンドが輝く理由」や、化学の第3問c「光化学の反応」および第5問「グルコースの平衡状態に関する考察」などに代表されるような、問題文である程度の知識を与えて誘導させる問題が多かった。考察をさせる問題が多かったため各大問が長くなり、代わりに大問数が減少した。ただ、大問数などを除いて形式はセンター試験と近い部分が多く、試行調査ほど大きく変化することはなかった印象である。

共通テスト「化学」での新たな傾向

化学についても物理と同様、高校で学ぶ知識をもとにして、受験生に思考させる問題が目立った。試行調査では、実験レポートを題材にして穴埋めさせる問題なども見受けられたが、今回の試験ではそのようなタイプの出題はみられなかった。

第3問で、錯イオンを題材に光化学の反応に関する問題が出題されたことが目新しかった。高校の教科書では発展として扱われている光化学の反応だが、光化学の知識自体は必要とせず、問題文をもとに計算をする問題であった。内容としては普段の高校などにおける実験の流れに沿うものであり、また大学に入学後の実験においても必要な考え方に沿うものであった。そういった意味でも「より実用的な」場面を踏まえた知識を問う問題や計算力を問う問題などが出題された。

第5問では、グルコースの異性化を題材にした平衡の問題が出題された。「化学平衡」は理論化学で、「グルコースの異性化」の知識は有機化学の分野で取り扱われている。こういった、教科書では別の分野として扱われている事項について、双方を勘案しながら問題を解き進めていくタイプの問題は今回の大学入試改革における一つの目玉であるとも言える。普通の受験生はあまり扱ったことがないタイプの問題を、問題文である程度誘導しながら考えさせる問題であり、グラフ用紙が与えられているのでこれも活用して考察を進めていく問題でもあった。過去のセンター試験ではあまりなかった出題だと言える。

「化学」で比較的目新しかった第3問c「実験をして考えさせる問題」

今回の共通テストでは、第3問で、光化学の反応に関する問題を素材にして思考力を試そうとする問題があった。試行調査では、実験レポートを穴埋めさせる問題があったが今回の共通テストではそのようなタイプの問題は出題されなかった。ただし、実際に実験を行った際に結果を分析するという視点が求められる問題があった。ここでは具体例として問題cを挙げてみよう。

第3問cは次のような問題になっている。

「実験Ⅰにおいて、光を当てることにより、溶液中の[Fe(C2O4)3]3-の何%が[Fe(C2O4)2]2-に変化したか。最も適当な数値を、次の①~④のうちから1つ選べ。」

この問題で問われている[Fe(C2O4)3]3-や[Fe(C2O4)2]2-といった物質を丁寧に学習してきた受験生は少ないであろう。実際、これは知らなくても解ける。この問題を解くために必要な反応式などの知識は、基本的に問題文で与えられているからだ。

この問題では、問題文で与えられている知識をもとに、実際に実験結果として得られたデータをいかに処理していくかが問われている。今までの化学の入試の大半は今まで、実験結果は知識として知っていたうえで計算力などを問うような問題が多かった。しかし今回の共通テストでは、普通受験生が知らない実験結果を問題文で与え、そのような結果が得られたときにどのように結果を処理するのかを問う問題となっていた。すなわち、今までのように教科書や参考書をもとに反応を追っていく勉強だけではなく、実際に自分の手で実験をしてその結果を処理する能力を求められるのである。

共通テスト「物理」の新たな傾向

第3問では「ダイヤモンドが輝く理由」を考察させる問題が出題された。中身は、「光の反射」に関する基本的な知識が身についていれば解ける問題である。しかし、問題の途中から、グラフなど必要知識は問題用紙で与えたうえで、ガラスとの違いを考察させるなど思考力を要する問題があった。必要となる知識は高校で学ぶレベルであるから、問題や問題文で与えられているグラフなどに驚くことなく、自分の持つ知識をもとに考えていけばよい。

第4問にはやや発展的な力学の問題があった。放物線運動の問題で、軌道を正確に把握することが求められた。この問題は、設問の設定としてはキャッチボールにおける放物線について議論させており、今までのセンター試験と比べてやや実用的な場面を想定されたものになった。

また、全問題が必答問題となり、原子分野も全受験生が取り組まなくてはならなくなった。

「物理」で比較的目新しかった第3問「ダイヤモンドが光る理由

物理においては第3問において、日常生活でも目にすることがある「ダイヤモンド」を題材に、化学と同様に結果を元に考察することを求める問題が出題されていた。

ダイヤモンドが光る理由を考察する問題であり、前半では「ダイヤモンドが様々な色に光る理由」について考える問題が出題されていた。ダイヤモンドが光る理由について扱ったことがある受験生は少ないであろうが、教科書で求められる知識は問うた上で、教科書の内容を超える内容についてはある程度誘導して思考させる問題となっていた。
後半では、自然科学の実験では非常に重要、とりわけ大学に入学後の実験においては当たり前と考えられている「比較」という視点も織り交ぜて思考させるような出題があった。ガラスと比べて、ダイヤモンドが様々な色に光る理由を考察する問題である。

この問題では、グラフで実験結果が与えられる。この結果を基に考察をしていくことが求められているのは化学と同様であるが、物理の問題では「定性的な分析」が求められていた。すなわち、実験データがグラフ(定量的=数値に近い形)で与えられているが、それを分析して、物質の性質を判断することが求められていたのである。実験結果だけであれば実験器具の操作方法を知っていれば誰でもできる。今回の共通テストでは、高校の知識を基礎として、実験操作だけではできない「分析」をすることが求められていたのである。

世界史

 試行調査で提示された形に沿う内容で、資料の文章を読み取る力、思考力を問う問題が数多く出題された。リード文や資料を読み取るために多くの時間を費やす構成になっているが、問われている問題は基本的なものであったため、難易度はセンター試験と同等レベルであった。大問数は5題と試行調査と同数でセンター試験の4題と比べると増加となっているが、解答数が36問から34問に減少した。そのため3点問題が増加し、そのことが受験の得点に大きな影響を与えることになった。

 出題分野は古代から現代史(時代)、ヨーロッパ・アジア(地域)、文化史とバランス良く出題された。

日本史

 従来のセンター試験の問題は①知識を直接的に問う問題(大部分)と②資料(図表や文献)の単なる読み取り問題(少数)の2つのパターンに分けることができた。①については用語を覚えていればある程度解くことはできたし、②の読み取りについても特に読解に難を来たすということもなかった。

しかし、試行調査においては各設問の問われ方もさることながら、注目すべき点は各問の選択肢が歴史用語をあまり用いないで書かれている点である。このことで選択肢の内容が読み取りづらくなり、受験生を混乱させたことだろう。また、資料問題も従来と異なり、複数の資料を併せて読み取ることを要求する問題がほとんどであった。この点から試行調査は、①単なる歴史用語の暗記に留まる学習では不十分であり、②因果関係をベースとした立体的な歴史の流れを踏まえられるほどの理解が求められるものであると言える。

それに対して今回の共通テストは、センター試験と比較すると資料問題の割合が高まったとは言え、それ以外は目立った変更点は見られない。多くの選択肢は歴史用語を交えた理解の容易な文で書かれており、また過去のセンター試験の問題と酷似した問題も見られた。割合の高まった資料問題も特に解答に難のある問題は見当たらず、全体として難易度はセンター試験とほとんど変わらないものであった。

 とは言え従来のセンター試験が単純な用語の暗記で事足りたかと言えばそういう訳ではなかった。先にも述べた因果関係をベースとした立体的な歴史認識と把握の必要性は、共通テスト以前から再三にわたって生徒に注意喚起し続けていたものだ。また今回の共通テストにも、先にも述べた「選択肢が極力歴史用語を用いずに書かれているもの」は一部出てきている(例えば大問1の問5。それでも試行調査に比べれば特定は容易である)が、こういった類の選択肢はセンター試験時代からしばしば見られたものであり、実は特段真新しいものではない。

 とどのつまり、センター試験にしても第1回共通テストにしても試行調査にしても、歴史用語の暗記に留まらない力の有無が試されていたのであり、試行調査の問題においてその傾向が格段に高まったと言うことができる。
今後、共通テストがどう変化するか定かではないが、以上のことからセンター試験の過去問は未だに共通テストの対策として利用価値があると言える。試行調査は頭の中で歴史を抽象化する力が最も試されるものであったので、いきなり手を付けるのはお勧めしない。次年度以降、仮に試行調査のような問題が出てくるようになったとしても、まずは比較的具体的な問で形成されているセンター試験の問題を解くことを勧めたい。